子どもの癇癪がつらい。「うるさい」と思ってしまう自分は異常じゃない

夜の22時。保育園から帰って、夕食を食べさせて、お風呂に入れて。 ようやく終わりが見えてきた、その瞬間に始まった。

「やだーーーっ!」

パジャマを着ないと泣き叫ぶ声が、部屋に響く。 昨日も同じだった。一昨日も。

そのとき、頭の中でよぎった言葉を、もし口に出せたとしたら。 「うるさい」 「消えてほしい」

そう感じてしまった自分が、怖いと思いません?

この記事は、その瞬間を経験したことがある人に向けて書いています。 「うるさい」と思ってしまった自分が異常なのか。なぜこんなに苦痛なのか。その正体と、今夜から使えるやり過ごし方を整理しました。

目次

「うるさい」と思ってしまう自分は、異常じゃない

結論から言います。

子どもの泣き声や癇癪を「苦痛」と感じることは、心が弱いからでも、親として欠陥があるからでも、ありません。

理由は2つあります。

① 脳が「危険信号」として反応している

子どもの泣き声、特に高音域の叫び声は、人間の脳が本能的に「緊急事態」として処理するように設計されていると言われています。

これは進化の産物であり、乳幼児の泣き声を聞いた瞬間に体が反応するのは、人間が長い歴史の中で生き延びるためにつくり上げてきたメカニズム。

つまり、子どもの声を聞いて「耐えがたい」と感じるのは、あなたの感情が壊れているのではなく、あなたの脳が正常に機能している証拠とも言えます。

問題は、その反応が毎日そして何時間も続くことです。緊急アラームを1日中聞かされれば、誰でも限界を迎えます。

② 感覚に敏感な気質を持っている場合、苦痛は何倍にも増幅される

「自分だけ特別につらい気がする」と思ったことがある方もいるんじゃないでしょうか?

それは、あなたが「敏感すぎる」のではありません。情報処理の能力が高いのです。

HSP(非常に敏感な人)と呼ばれる気質を持つ人は、音・光・空気の変化をより精細に受け取る神経系を持っています。同じ音を聞いても、受け取る情報量が違う。それだけのことです。

あなたがおかしいのではなく、あなたの神経系がよく働いているだけです。

癇癪・夜泣きが「特につらい」人の共通点

苦痛の強さには、個人差がある。 でもその差は「メンタルの強さ」ではなく、置かれている状況の違いです。

以下の3つが重なっているほど、同じ泣き声が更につらく感じられます。

① 慢性的な睡眠不足の状態にある

睡眠不足の状態では、脳の前頭前皮質(理性や感情の調整を担う部位)の働きが著しく低下します。

悩み掲示板でも「わかってるけど、どうしても怒鳴ってしまう」という声が数多く見られます。わかっていても止められないのは、意志が弱いのではありません。脳が正常に機能するための燃料が、足りていない状態です。

例えるなら、睡眠不足の状態で全力でで育児をしているのは、燃料ゼロのまま高速道路を走っているようなもの。走れなくて当然なのです。

② 仕事が終わった直後に、癇癪が起きている

共働きの家庭では、保育園のお迎えから帰宅した直後が最も危険な時間帯。

仕事で全エネルギーを使い果たした状態で始まる「第二のシフト」。そこに癇癪が重なると、対処するためのリソースが文字通りゼロです。

「帰宅して10分以内に子どもが泣き始めると、もうどうにもならなくなる」という感覚は、決して大げさではありません。リソースが枯渇した状態の、正直な反応です。

③「いつ終わるかわからない」という感覚がある

夜泣きが3ヶ月続いている。癇癪が毎日起きる。イヤイヤ期がいつ終わるかわからない。

出口のないトンネルにいる感覚が、苦痛を何倍にも増幅させます。

「あと2週間の辛抱」なら耐えられる。でも「いつ終わるかわからない」とき、人は絶望します。これは精神の問題ではなく、見通しの立たない状況に置かれた人間の、ごく自然な反応です。

この3つが重なっているなら、苦痛を感じるのは当たり前。

あなたが弱いのではありません。これらの状況が、あなたを消耗させているのです。

苦痛を「やり過ごす」ための3つの方法

ここでは、「癇癪をなくす方法」は提案しません。

正直に言います。癇癪や夜泣きを完全になくす画期的な方法はありません。

でも、「苦痛をやり過ごす」ための方法はあります。

方法① 物理的に聴覚を遮断する

子どもが安全な場所にいると確認したうえで、イヤホンをする。音楽をかける。

「育児放棄じゃないか!」と思う方もいるかもしれません。でも、考えてみてください。

怒鳴り続ける親の前にいる子どもと、イヤホンをしながら冷静でいられる親の前にいる子ども。どちらの環境が子どもにとって安全でしょうか。

聴覚を遮断することは、育児放棄ではありません。親が正気を保つための安全弁です。自分を守ることが、子どもを守ることに直結しています。

方法② 「今だけ」に時間を区切る

二つ目の方法は、「この泣き声があと5分続いたら、一度別の部屋に行こう」と、自分の中で小さな終わりをつくること。

終わりが見えない感覚が苦痛を増幅させています。だから、人工的に終わりをつくる。

「いつか終わる」ではなく「あと5分」。それだけで、気持ちの持ちようが全然違います。

方法③ つらい時間帯だけ「外注」する

特定の時間帯だけパートナーに交代を頼む。週に一度だけ一時保育を使う。

「課金して解決する」という選択肢を、選んでいいです。

育児の苦痛な時間を物理的に減らすために使うお金は、「贅沢」ではありません。自分が壊れる前に手を打つ、合理的な判断です。外注・課金で育児の時間設計を見直す方法は、こちらの記事で整理しています。

「慣れる」を待たなくていい

「子どもが大きくなれば楽になるよ」「そのうち慣れるから」

何度か言われたことがある方もいるんじゃないでしょうか。

その言葉が正しいかどうかは、一旦置いておいて、問題は「慣れるまで待つ」という戦略が、今の苦痛に対して何の解決にもならないことです。

慣れを待っている間に、親は消耗しきってしまう。消耗しきった状態で子どもの前に立ち続けることが、子どもにとっても、自分にとっても、いいことだとは思えません。

慣れるより先に、今の苦痛を減らす仕組みを作ることが先決です。

3つの方向性があります。

まず、睡眠。これが土台です。誰かに頼んで、週に1日だけでも6時間のまとまった睡眠を確保する。それだけで、翌日の苦痛の総量は変わります。

次に、外注。苦痛を感じる時間帯だけ、誰かに代わってもらう。ベビーシッターでも、パートナーへの交代依頼でも。消耗しきっている原因を整理したい方は、こちらの記事も参考にしてみてください。

そして、夫婦の分担。「自分だけが担っている」という状況が続いているなら、今の分担のあり方を見直すことが、根本的な解決に近づきます。分担を変えるための具体的な話し合い方は、こちらにまとめています。

まとめ

「うるさい」と思っていい。 「消えてほしい」と思っていい。

それは、あなたが壊れているサインではなく、限界を超えた状態に置かれている人間の、正直な反応です。

子どもの泣き声に苦痛を感じるのは、脳が正常に機能しているから。特に睡眠不足と仕事疲れが重なる状況では、同じ泣き声が何倍も苦痛に感じられます。やり過ごすためには、聴覚を遮断する、時間を区切る、時間帯を外注する。この3つを、罪悪感なく使っていい。

あなたは今日も、苦痛の中で子どもの前にいた。

それだけで、十分です。

共働き育児のしんどさを丸ごと整理したページはこちら → 共働き育児のしんどさと向き合うための総合ガイド

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