育児が嫌いになったのは、睡眠不足のせいかもしれない話

「あれ、昨日はわりと優しくできたな」 そんな日と、 「もうダメだ、子どもの顔も見たくない」 そんな日が、交互にやってくる。

その差は、いったいどこから来るのでしょうか?

「育児は嫌いだけど、昨日はわりと上手くやれた」 「せっかく週末リフレッシュしたのに、月曜の夜にはもう嫌々モード」 「昨日は本当に最悪だったのに、ぐっすり寝たらスッキリしていた」

育児が嫌いになったのは、あなたの愛情が足りないからではない。

それ、もしかすると、 ただ、脳が眠れていないだけかもしれないのです。

この記事では、睡眠不足が育児への感情にどう影響するかを整理していきます。読み終わる頃には、「自分の性格の問題ではないかもしれない」と少し肩の力が抜けるはずです。

「育児が嫌い」と感じる日に、共通していること

育児が嫌いだと感じる日と、そうでもない日。

この2つを並べて思い返してみると、あることに気づきます。 共通点は、ひとつ。 「前の晩、何時間眠れたか」。

妻のことを振り返ってみても、まさにそうでした。 夜泣き対応で2〜3時間しか眠れなかった翌日は、ほんの些細なことで簡単に限界を超えてしまう。 子どもがコップを倒しただけで涙がこぼれてきたり、「保育園行きたくない」のひと言で朝から頭が真っ白になったり、と。

逆に、たまたま夜泣きが少なくて6時間まとめて眠れた朝は、同じような出来事が起きても「まあ、そういう日もあるよね」で受け流せていたんです。

子どもは、何も変わっていません。 変わっているのは、親の睡眠時間だけ。

試しに、ネットで「子育てが嫌い」と検索してみると、こんな声が多く見られます。

  • 「2歳半まで、ずっと2〜3時間しか続けて眠れなくて、万年睡眠不足」
  • 「30分〜1時間で起きては授乳……が何日も続いて、夜中に発狂しそうになった」
  • 「眠れない日が続いた末に、イライラがついに爆発した」

どの声にも共通しているのは、「嫌い」という感情の前に、必ず「眠れていない」という事実があること。

これは、決して偶然ではありません。 脳の仕組みに、ちゃんと理由があるのです。

「育児が嫌いという感情そのものを整理したい方は、こちらの記事も参考になるかもしれません。」

睡眠不足が「育児を嫌いにさせる」仕組み

「嫌い」という感情と「睡眠不足」という事実との関係は、どうやら偶然ではなさそうです。

その科学的根拠について、少し調べてみました。

怒りのアクセルと、ブレーキ

脳の中には、感情のアクセルとブレーキにあたる部位があります。

感情のアクセル役扁桃体(へんとうたい)怒り、恐怖、不快感を生み出す場所
ブレーキ役前頭前皮質(ぜんとうぜんひしつ)
前帯状皮質(ぜんたいじょうひしつ)
理性で感情を抑える場所

普段はこの二つがちゃんと連携しているので、子どもがコップを倒しても「まぁいいか」と流せます。

ですが、睡眠不足になると、扁桃体と前帯状皮質の機能的な結合が弱くなり、扁桃体の過剰反応を抑えられなくなることが研究で明らかになっています。 (出典:国立精神・神経医療研究センター

つまり、ブレーキが効かなくなる。

アクセルだけが踏まれている状態で、怒りが暴走する。これが「ささいなことで子どもにキレてしまうこと」の正体です。

たった5日で、誰でもこうなる

驚くのは、これだけの変化が、ほんの数日で起きてしまうということなんです。

国立精神・神経医療研究センターの研究では、健康な人でも、たった5日間の睡眠不足で扁桃体と前帯状皮質の結合が弱まることが確認されています。 さらに、睡眠不足が強いほど結合は弱まり、結合が弱まるほど不安や抑うつが強まる傾向も報告されているそうです(出典:国立精神・神経医療研究センター)。

同じ研究では、もうひとつ興味深いことがわかっています。 睡眠不足のとき、「恐怖の表情」を見たときの扁桃体の活動だけが増え、「幸福な表情」への反応は変化しなかったというのです。 つまり睡眠不足の脳は、ネガティブな刺激にだけ過剰に反応するようになる(出典:国立精神・神経医療研究センター)。

子どもの泣き声が、いつも以上にうるさく聞こえる。 子どものイヤイヤが、いつも以上に攻撃のように感じる。 子どもの寝顔が、いつも以上に可愛く思えない。

これは、性格の問題ではありません。 脳が正常に動けていない状態のSOS信号

毎晩6時間未満の睡眠が続いている共働き家庭の親にとって、「育児が嫌い」という感情は、本当に嫌いなのではない。 それは、脳が「もう限界です」と発している、悲鳴のようなサインなんです。

共働き親が眠れない、3つの構造的な理由

「じゃあ早く寝ればいいのでは」

そう言われて、できたら苦労しないですよね。共働き親が十分に睡眠をとれないのには、努力ではどうにもならない構造的な理由があります。

理由①:夜泣き・授乳で、強制的に中断される

そもそも、連続して眠ること自体が許されていない時期があります。

寝かしつけて、ようやく自分も布団に入って、30分後に泣き声で起こされる。授乳して、寝かしつけて、また30分後に起こされる。これが朝まで続く。

これは「短く眠る」のとは違います。眠りに入った直後に叩き起こされる作業を繰り返しているだけ。深い眠りに入る前に毎回中断されるので、何時間ベッドにいても疲労は回復しません。

「2歳半まで続けて2〜3時間しか寝られなかった」「夜泣きで発狂しそうになる」という声は、決して大げさではないんです。

理由②:帰宅後の「第二シフト」で、就寝時間が後ろにずれる

仕事から帰って、お迎え、夕食、お風呂、寝かしつけ。

すべて終わるのが23時。そこからやっと「自分の時間」が始まります。スマホを見たり、明日の準備をしたり、たまった洗濯物を畳んだり。

気づけば0時、1時。

「明日も6時起きなのに」と思いながら、それでも自分の時間を確保したくてスマホを手放せない。これは意志が弱いのではなく、1日の中で唯一、自分のための時間を取り戻そうとしている防衛反応です。

帰宅後の負荷が大きいほど、就寝時間は後ろにずれていく。構造的に、睡眠時間が削られていくんです。

理由③:体は疲れているのに、脳が覚醒している

ようやく布団に入っても、眠れない夜があります。

明日の仕事のこと。子どもの保育園のお迎えに間に合うか。週末の予定。義実家への連絡。夫(妻)との微妙な空気。

頭の中で、解決できないタスクがぐるぐる回り続ける。体は疲労でズシンと重いのに、脳だけが覚醒している。

この状態は「眠れない」ではなく「脳が眠ることを許してくれない」が近いのかもしれません。

「嫌い」を減らすために、まず睡眠を1時間増やす方法

ここまで読んで、「じゃあどうしろと」と思った方もいると思います。

完璧に解決する必要はありません。まずは1時間だけ睡眠を増やす。それだけで、明日の感情はかなり変わるはずです。

3つの方向性を紹介します。

方向性①:夜間の育児を、夫婦で交代する

毎晩二人で起きていても、二人とも睡眠不足になるだけです。

曜日を決めて、夜間対応の担当を固定するのがおすすめ。たとえば月水金は夫、火木土は妻、日曜は交代でカバー、というふうに。

担当じゃない日は、別の部屋で耳栓をして寝る。これだけで、週3日は6時間以上連続して眠れる日が作れます。

「全部の夜泣きに対応する」をやめて、「週3日だけはぐっすり眠る」に切り替える。たったこれだけで、脳の回復スピードが変わります。

帰宅後の負荷を減らすルーティン設計について、もう少し詳しく知りたい方はこちらの記事もどうぞ。

方向性②:帰宅後の負荷を減らして、就寝時間を30分早める

夕食づくりにかかる時間を削るだけで、就寝時間は前倒しできます。

宅食サービスやミールキットを使えば、帰宅後の調理時間が30分くらい短縮できる。「料理しないなんて手抜きだ」と思う方もいるかもしれませんが、手抜きではなく睡眠時間の確保です。

30分早く寝られれば、それだけで脳の回復は変わります。

帰宅後の負荷を減らすルーティン設計について、もう少し詳しく知りたい方はこちらの記事もどうぞ。

方向性③:一時保育・ベビーシッターで「まとまった睡眠の日」を作る

これが一番、罪悪感を持たれやすい方法かもしれません。

でも考えてみてください。あなたが寝不足でイライラしている1日と、ぐっすり眠ったあとに笑顔で接する1日。子どもにとってどちらがいいでしょうか。

月に1〜2回でいい。子どもを一時保育やシッターに預けて、昼間にまとまった睡眠を取る。お金で睡眠を買うという発想です。

数千円で、その後の数週間の感情が変わるなら、十分に元は取れるはず。

預けることへの罪悪感をなくしたい方はこちらの記事を読んでみてください。

まとめ:今夜、何時に寝られそうですか

最後に、もう一度だけ整理します。

  • 育児が嫌いと感じる日は、睡眠不足と連動していることが多い
  • それは性格の問題ではなく、脳の機能の問題
  • たった1時間、睡眠を増やすだけで、明日の感情は変わるかもしれない

「育児が嫌い」と検索した夜に、自分を責める必要はありません。

責めるべきは自分ではなく、眠れない構造の方です。

今夜、何時に寝られそうですか。

子どもの寝顔を可愛いと思える朝のために、今日はいつもより30分だけ、自分のために時間を使ってみてもいいかもしれません。

共働き育児のしんどさを丸ごと整理したページはこちらからどうぞ。

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